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前立腺がん

PROSTATE CANCER

男性特有の病気

前立腺は膀胱に隣接する男性特有の臓器です。したがって、前立腺がんは男性にのみ発生する悪性腫瘍です。
日本人男性の平均寿命の延長、食生活の欧米化にくわえPSA(前立腺特異抗原)検査の普及に伴い、日本人男性における前立腺がん患者数は増加しています。PSA検査が普及するまでは、骨やリンパ節などに転移した状態で発見されることの多い病気でしたが、最近ではPSA検査の登場により、前立腺にがんが限局した早期がんの状態で発見できるようになりました。早期がんの状態では症状はないのが、前立腺がんの特徴です。
前立腺がんの治療はPSA値、病理学的所見(生検)、画像診断(CT、MRI、骨シンチグラフィー)、年齢、生活様式などを総合して治療法を決定します。前立腺に限局した早期がんの場合、根治療法の適応となります。根治療法としては手術療法と放射線療法があります。一方、前立腺の周囲までがんが広がっているような場合やすでに転移している場合には、内分泌療法(ホルモン療法)の適応です。

手術療法

骨盤の奥にある前立腺と精嚢腺を摘出し、膀胱と尿道を縫い合わせる手術です。前立腺は尿道括約筋に接するため、手術後に一時的な腹圧性尿失禁を生じる場合があります。また勃起神経(陰茎海綿体神経)は前立腺周囲を走行しているため、手術後に勃起不全が生じることもあります(限られた症例では神経温存を行うことがありますが、神経温存を試みても勃起不全を生じることはありえます)。
我が国では、2012年4月よりロボット支援腹腔鏡下手術が保険診療の適応となりました。当科でもほぼ全ての手術症例に対し、ロボット支援下手術を行なっています。ロボット支援下手術の利点は、拡大視野により出血量の低減や尿失禁の早期回復が見込めることです。手術療法は、摘出した前立腺を詳細に調べることができるため、追加治療の必要性を知ることができるなど利点の多い治療法です。
入院期間は約10日程度です。当科では、これまで「da Vinci®」を用いた手術を行なっていましたが、2022年6月より国産手術支援ロボット「hinotori™」を導入し、2台体制での運用が可能となりました。

放射線療法

放射線療法は体の外部から照射する外照射療法と、前立腺内に放射線の入ったカプセル(線源)を挿入し内部から照射する内部照射(小線源療法)の2種類があります。
外照射は約2ヶ月間にわたって連日放射線を照射する方法です。治療中の有害事象としては、頻尿、下痢などを生じる場合があります。また放射線照射後数カ月経過したころから、血便、血尿といった症状がでることもあります。
一方、小線源療法は3泊4日の入院で治療可能ですが、20本程度の針を用いて線源を永久的に前立腺に挿入するため、治療には麻酔が必要になります。外照射と同様の有害事象が報告されていますが、頻度は外照射よりも少ないようです。

内分泌療法 (ホルモン療法)

内分泌療法(ホルモン療法)は、男性ホルモンの働きを抑えて前立腺がん細胞の増殖と活動を抑える治療法で、ほとんどの前立腺がんがこの治療によく反応します。ホルモン療法は抗がん剤や放射線療法のように、細胞を殺してしまうわけではありません。そのため、治療を続けているうちにホルモン療法に対する抵抗性が出てきて、少しずつ治療効果がみられなくなります(去勢抵抗性前立腺がん)。ただし、治療効果のみられる期間は、患者さんによって様々です。最近では、去勢抵抗性前立腺がんに対して、より強力にホルモンを抑える薬剤も使用できるようになっています。
実際にはがんの進行度にあわせて、上記の治療法を組み合わせながら、患者さんと一緒に治療方針を考えていきます。