教授メッセージ

PROFESSOR’S MESSAGE
大分大学医学部 腎泌尿器外科学講座 教授 秦 聡孝 Toshitaka Sin

腎泌尿器外科学には
たくさんの「魅力」が溢れる

はじめに、腎泌尿器外科学の「魅力」についてお話しましょう。
一つ目の「魅力」は、あつかう臓器が重要臓器である、という点です。東洋医学では、古くから重要臓器を例える言葉として、「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」という表現があります。諸説ありますが、この中には、腎臓はもちろん、実は膀胱(ぼうこう)も含まれているんですよ。
二つ目の「魅力」は、領域の広さですね。われわれは、悪性腫瘍(がん)や排尿障害、尿路結石、小児・女性泌尿器疾患、副腎等の内分泌疾患、腎移植や血液浄化といった腎不全医療など、非常に多岐にわたる分野の診療を行っています。
三つ目の「魅力」は、診断から、内科的治療、そして外科的治療まで、ほとんどの疾患で、一貫性のある診療を行えることでしょう。やはり、常に患者さんに寄り添っていられる存在でありたいですからね。
四つ目の「魅力」は、昔から先進的な医療に積極的に取り組んでいることです。私の入局した1990年代後半は、泌尿器腹腔鏡手術の隆盛期でした。最近ではロボット手術への取り組みも早く、本邦では2012年に、全術式の中でもっとも早く、われわれの行う前立腺全摘除術が保険収載されたんですよ。
本当は、もっともっと多くの「魅力」があるんですが、、、時間がいくらあっても足りませんね。

最先端の低侵襲治療を大分の地で

ロボット支援手術について、当院では2012年に大分県ではじめて、手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」を導入しましたが、その第1例目の手術を行ったのは、われわれ泌尿器科でした。
当時、私もチームの一員として手術に参加しましたが、新しい時代の到来にとても気持ちが高ぶったことを今でも鮮明に覚えていますよ。
その後も順調に実績を重ねて、2022年末までに泌尿器科だけで、650件以上のロボット手術を行ってきました。今では適応となる術式も拡大して、講座内にロボット手術を執刀できる医師、指導できる医師の数が着実に増えてきました。もはやわれわれ泌尿器科医にとっては、ロボット手術は特別なものではなくなり、日常診療の一環になったといえるでしょうね。

2022年には、当院2台目となる国産初の手術支援ロボット「hinotori(ヒノトリ)」を九州で初めて導入して、九州第1例目の手術を泌尿器科で、私が執刀させていただきました。2023年4月時点では、九州唯一の「hinotori」泌尿器科領域手術見学施設にも認定されています。
ぜひ、これから泌尿器科医を目指す学生や研修医のみなさんには、早いうちから積極的にロボット支援手術に取り組んでほしいですね。泌尿器科であれば、チャンスはたくさんありますから。

「外向き」志向の大切さ

2020年からの新型コロナウイルス感染症の拡大によって、当初は一時的と思われたさまざまな社会活動の制限が長期化して、すっかり私たちの中に「内向き」志向が定着化してしまったのではないかと、個人的にとても心配しています。また、新専門医制度の導入や医師の働き方改革、ワークライフバランスなど、私たちを取り巻く社会情勢は日々劇的に変化していますから、従来の講座のあり方そのものを再考して、時代に即して「変容」していくことが求められていると思っています。
今後は、こうした状況だからこそ、「外向き」志向を重視して、国内外の学会や研究会への積極的な参加・発表を推奨して、他の医療機関や学部との共同研究や企業との連携などの人的交流もどんどん促進して、若い教室員の国内や海外留学への意欲をぜひ高めていきたいですね。

また、大分県全体の泌尿器診療を支える存在として、地域の医療機関との風通しのよい連携も欠かすことができません。
こうした「外」とのつながりは、講座の発展に不可欠ですし、次世代の人材が、自発的に「外向き」志向を身に着けられる環境づくりは、私自身に課せられた大きな使命のひとつだと捉えているんです。ぜひ、すぐれた後進を育成して、特色ある研究成果を世界へ向けて発信できるようにしたいですね。

「明るく、戦える」
講座づくりを目指して

たくさんの「ひと」が集って、全員が当事者意識を持って、ものごとに向き合う「明るく、戦える」講座づくりが理想ですね。教室員ひとりひとりが、自ら強い「情熱」をもって診療・教育に取り組んで、自ら強い「興味」をもって研究に取り組んでくれることを、心から願っています。これからも、私自身が育てていただいた大分県の地域医療、大分大学、そして当講座のさらなる発展のために、誠心誠意、努力していきます。
さいごに、超高齢社会を迎え、われわれ泌尿器科医の果たすべき役割は、今後ますます高まっていくと確信しています。そのなかで、ロボット支援手術やプレシジョン・メディシンなどの先進的な取り組みはもちろん、幅広い泌尿器科の診療・研究分野に関して、教室員ひとりひとりがサブスペシャリティーを身に着けて輝きながら、講座一丸となって常に前進していきたいですね。

秦 聡孝

大分医科大学 1999年 卒業
専門分野:泌尿器悪性腫瘍 / 腹腔鏡・ロボット支援手術

役職

大分大学医学部 腎泌尿器外科学講座 教授
大分大学医学部附属病院 腎臓外科・泌尿器科 診療科長
大分大学医学部附属病院 材料部 部長
大分大学医学部附属病院 高難度新規医療技術管理部門 部門長
大分大学医学部附属病院 血液浄化センター センター長
大分大学医学部附属病院 低侵襲手術センター 副センター長
大分大学医学部附属病院 生殖医療センター 副センター長

略歴

1993年3月 大分県立大分上野丘高校 卒業
1999年3月 大分医科大学医学部 卒業
2005年3月 大分大学医学部大学院医学系研究科 修了
2005年4月 大分大学医学部附属病院泌尿器科 助手
2007年4月 国立がんセンター中央病院 レジデント
2009年4月 大分県厚生連鶴見病院腎臓外科・泌尿器科 科長
2015年5月 米国・南カリフォルニア大学泌尿器科 リサーチフェロー
2017年8月 大分大学医学部附属病院腎臓外科・泌尿器科 講師
2018年3月 大分大学医学部腎泌尿器外科学講座 准教授
2022年4月 大分大学医学部腎泌尿器外科学講座 教授

認定・資格

医学博士
日本泌尿器科学会 専門医・指導医
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本内視鏡外科学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター認定
[前立腺/膀胱; da Vinci / hinotori、副腎/腎/尿管; da Vinci/ hinotori]
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本臨床腎移植学会 腎移植専門医
日本内分泌学会 内分泌代謝科(泌尿器科)専門医

所属学会

日本泌尿器科学会:代議員、学術委員会委員、保険委員会委員、広報委員会委員、ダイバーシティ推進委員会委員
International Journal of Urology Editorial Board
日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会:代議員、医工連携・新技術検討委員会委員
泌尿器腹腔鏡手術ガイドライン「腹腔鏡下/ロボット支援膀胱全摘除術小委員会」委員
日本内視鏡外科学会:評議員
日本癌治療学会:代議員
日本泌尿器腫瘍学会:代議員
日本老年泌尿器科学会:評議員、総務委員会委員
西日本泌尿器科学会:理事、評議員、保険委員会委員
腎移植・血管外科研究会:世話人
泌尿器科再建再生研究会:世話人
泌尿器科分子・細胞研究会:世話人
日本腎泌尿器疾患予防医学研究会:世話人
九州泌尿器科連合地方会:理事
九州小児泌尿器研究会:世話人
大分県排泄リハビリテーション・ケア研究会 代表世話人

日本ロボット外科学会、日本臨床腎移植学会、
日本移植学会、日本透析医学会、日本内分泌学会、日本内分泌外科学会、
日本メディカルAI学会、泌尿器病理研究会
American Urological Association (AUA)、European Association of Urology (EAU) 、
Société Internationale d'Urologie (SIU)