腎腫瘍
腎臓(じんぞう)の位置と働き
腎臓は、通常、脊椎(せきつい)の両側に左右一つずつ存在する長径10cmほどの臓器です。血液のろ過、尿の生成、体液量の調整、造血、骨代謝など様々な役割を果たしている臓器です。
腎腫瘍の分類
腎臓にできる腫瘍には、良性のものと悪性のものがあります。代表的なものは以下のとおりです。
腎血管筋脂肪腫(良性腫瘍)
腎臓に発生する良性腫瘍の中で、頻度の高いものです。文字通り、血管成分、脂肪成分、平滑筋成分から構成されますが、その比率はさまざまです。小さい場合は経過観察をすることが多いです。良性の腫瘍ですが、腎臓がんとの見分けが困難であったり、大きくなって破裂、出血を来すこともあります。その場合は腎動脈塞栓術(放射線科)や手術の対象となります。結節性硬化症の場合、薬物療法(mTOR阻害剤)を行うことがあります。
単純性腎嚢胞(のうほう)
加齢とともに発症頻度が高くなり、多くは無症状であり、治療として何もしないことが多いです。大きくなって圧迫感などの症状が出現したり、悪性腫瘍を合併した場合は手術療法の対象となります。他の遺伝性嚢胞性疾患との鑑別にも注意が必要です。
腎臓がん(悪性腫瘍)
症状、臨床所見
古くは、肉眼的血尿、側腹部の痛み、しこりが3主徴とされていました。近年は健康診断や、他の病気の検査で行った腹部エコー(超音波検査)、C T(コンピュータ断層撮影)検査で偶然発見されるような無症状の方の割合が多くなっています。
検査、診断
腹部エコー、C T、M R I検査などを行います。各種画像検査の所見を総合的に判断して治療方法の決定を行います。病気の進行具合(臨床病期)に応じて、治療方法が異なってきます。手術に際しては、腎臓の血管の走行や隣り合う臓器との位置関係などが重要となります。事前にC T画像を3D構築し、3次元の立体構築画像を皆で確認して手術に臨みます。
手術療法
腎臓にとどまった腎臓がんの場合、手術療法が最も根治を期待できる治療法となります。当科では腫瘍が小さい場合(4cm未満、症例に応じて7cm未満)、腫瘍および腫瘍と接する正常組織を部分的に摘除し、残りの腎臓は温存する腎部分切除術を積極的に行っており、その多くをロボット支援下手術で行っています。腫瘍が大きい場合、小さくても部分切除が困難と判断した場合、ご年齢や腎機能を総合的に判断して片方の腎臓全体を摘出することがあります(根治的腎摘出術)。その場合は、多くを腹腔鏡下手術で行い、症例によっては開腹手術を選択します。どの方法を選択し、患者さんに提示するかは事前のカンファレンスで検討します。カンファレンスの結果を担当医より患者さんにお伝えし、手術方法を決定します。また、当科では小さなサイズの腎腫瘍に対して、合併症で全身麻酔が難しい場合など患者さんの状態によっては、凍結療法を治療法として提示することもあります。
薬物療法
発見時にすでに進行、転移している腎臓がんや、手術後に転移した患者さんに対しては、薬物療法を選択します。転移性、進行性腎臓がんに対する薬物療法は近年変化してきております。当科においては、免疫チェックポイント阻害剤2剤の組み合わせを始めとして、免疫チェックポイント阻害剤と分子標的薬との組み合わせなど、標準かつ最新の薬物療法を数多く行っております。これらの薬剤は、薬剤に奏効する患者さんもいる一方で、特に免疫チェックポイント阻害剤では、免疫関連有害事象という薬剤に伴う免疫系の症状が出現することがあります。その場合でも当科では各診療科の先生方と協力し、有害事象の管理を行っております。これらの薬剤に関しても、当科カンファレンスで治療法を検討し、担当医から患者さんに十分説明し、最終決定しております。