I

小 児

CHILDHOOD DISEASES

包茎

包茎とはおちんちんの先端が包皮(おちんちんの皮膚)で被われて露出していない状態をいいます。生まれたばかりの男の子は全くむけない状態が正常ですが、いつむけるようになるかは子供によって様々です。症状としては、包皮が赤く腫れる「亀頭包皮炎 きとうほうひえん」、尿がスムースにでず包皮がふくらむ「バルーニング」があります。また、包皮をむいた後にもどらなくなることを「かんとん包茎」といいますが、これは至急に受診が必要です。包茎の治療はステイロイド含有薬を塗る方法、それでも改善に乏しい場合は手術でおちんちんの皮膚をリング状に切除して残った皮膚を縫い合わせます。

尿道下裂

男の子の先天的なおちんちんの形態異常で、
①尿の出口が先端になく途中で開いているため立位排尿が困難
②おちんちんが下向きに屈曲しており、まっすぐに勃起しないため将来の性生活に問題が生じる

といった症状があります。治療は手術しかなく、おちんちんをまっすぐにすることと、尿の出口を先端までもってくること(尿道形成)を目的とします。尿の出口が陰嚢や会陰部(肛門のちかく)にある場合には2期に分けて手術を行いますが、通常は1期的に行います。難易度の高い手術であり、くりかえし再手術が必要になる場合があります。合併症は主に形成した尿道の問題で、出口や通り道がせまくなる狭窄、尿道の一部に穴があく瘻孔、先端が開いて尿道が後退するなどがあります。

停留精巣

精巣が陰嚢に降りてきていない病気で、男児100人に1人に認められます。胎児期に精巣はお腹の中にあり、出生時には陰嚢まで下りてくるのですが、これが何らかの原因のため途中で止まってしまった状態です。
生後6カ月を過ぎると自然下降が期待できないため、手術による治療を行います。鼠径部(足のつけね)に約2cm、陰嚢に約1cmの切開をして、精巣を陰嚢内に固定します。現在は2才までの手術が勧められており、当院でも1才前後で多く行っています。
触診で精巣が触れない場合には、MRIや腹腔鏡検査をまず行って精巣の有無を確認することがあります。

急性陰嚢症

男の子の陰嚢が急に痛み腫れる病状を指します。
急性陰嚢症を引き起こす疾患のなかでも精索捻転症(せいさくねんてんしょう)が最も重要です。精巣に血液を供給する血管が突然“雑巾を絞るように”にねじれてしまい、精巣に血液が流れなくなってしまう状態です。ねじれの程度にもよりますが、発症後6~8時間以内に治療しないと大切な精巣が痛み、精巣の組織が死んでしまう状態に陥ります。治療は、緊急手術でねじれを解除し、今後捻転しないよう陰嚢内に縫って固定します。しかし、受診や診断が遅れた場合には捻れを解除しても血流がもどらず精巣の摘出を要することがあります。
また、精巣近傍の退化するべき組織(精巣垂や精巣上体垂 せいそうじょうたいすい)が捻転し急激な陰嚢痛を発症することもあり、この場合も精索捻転症との区別が難しい場合は手術となることがあります。
精巣上体炎は精巣につながる精巣上体が細菌感染などで炎症を起こす状態ですが、尿が近くなったり、排尿に痛みをともなったり、尿検査で異常が認められることがあります。炎症が強いと発熱や血液検査での異常も認められます。精巣上体炎が明らかであれば手術は不要で、抗菌薬の内服または点滴での投与を行います。
思春期の男子ともなると陰部のことをなかなか話したがらず受診が遅れてしまうこともよく経験されます。したがって、普段からこのような緊急治療が必要な疾患があることを家庭内でもよく話し合っておくことが重要と考えられます。

精索静脈瘤

精索静脈瘤は、陰嚢や鼠径管内(足の付け根あたり)の静脈が瘤状にふくらんだ状態です。息をこらえてお腹に力を入れたときに触ることができる軽度のものから、目で見て明らかなものまで程度はさまざまです。左側に多く見られます。発症年齢は、 10-15 歳の時期に増加し、成人男性では約 15% に発見されます。精索静脈瘤は造精機能(精子を作り出す働き)、不妊症(子どもができなくなる)への関連が分かっています。
痛みがある場合や、精巣の発育が良くない場合には手術が適応になります。当院では小さい切開で顕微鏡下に精巣静脈をしばる方法を主に行っており、良い治療成績をあげています。

膀胱尿管逆流

腎臓で作られた尿は腎盂、尿管を通り膀胱にたまってから尿道を通って排泄されます。この流れは本来一方通行ですが、膀胱と尿管のつなぎ目が弱い場合に逆流が起こります。逆流があると膀胱内に入り込んだ細菌が腎臓まで上がることで腎盂腎炎を起こし、高熱がでたり、敗血症となることもあります。また腎盂腎炎を起こすと腎瘢痕という傷が腎臓に残り、働きが低下していきます。診断には排尿時膀胱尿道造影というレントゲン検査が必要になります。また腎臓への影響をみるために腎シンチという検査も必要となります。
逆流は成長とともに自然に消失する可能性があるため、抗生物質を一日一回飲み続けて感染を予防しながら経過をみる方法を初期治療として行います。この間にも腎盂腎炎を繰り返す場合や経過を見ても改善傾向のない高度な逆流は手術の適応となります。手術は開腹して膀胱と尿管をつなぎなおす逆流防止術を行います。逆流の消失率は95%以上であり確実性の高い手術です。現在は膀胱内に内視鏡を挿入し、膀胱と尿管の接続部にコラーゲンを注入する治療法も行っています。

水腎症

水腎症は腎臓で作られた尿がたまって尿路(尿の通りみち)が拡張した状態をいい、よく「腎臓がはれている」と表現されます。原因としては尿路に狭いところがあって尿の通過障害が起こっている場合と膀胱に一度たまった尿が逆流している場合があります。
最近では妊婦健診や乳児検診で無症状のまま発見される頻度が高くなっています。程度の軽いものは自然に軽快することが多いため、超音波検査で定期的に診察をして経過を見ていきます。しかし、尿の通過障害があって腎臓の機能が障害される場合や拡張が強く腹痛や嘔吐など症状がある場合には検査・手術が必要となります。

二分脊椎・神経因性膀胱

二分脊椎とは、背骨の後ろ側の部分の癒合不全(ゆごうふぜん:骨がつながっていない状態)を意味します。神経因性膀胱とは、神経の何らかの異常が原因となって、膀胱や尿道の機能に異常がみられる状態です。神経因性膀胱では、尿をためる機能や、ためた尿を排尿する機能に問題が生じます。
オムツをつけている間は、蓄尿や排尿機能の異常に気が付かないこともあります。生後数年たってから、尿に細菌がついて膀胱炎や腎臓の細菌感染を起こしたり、あるいはオムツをはずした後に尿失禁が続くということがきっかけで神経因性膀胱が診断されることがあります。
膀胱や尿道の機能異常の程度が軽い場合には、日中2時間毎の時間排尿で経過をみます。便秘は膀胱機能に悪影響を与えますので、便秘対策も大切です。尿路感染を起こしたり、膀胱や腎臓に問題がある場合には、間欠導尿(時間毎に尿道から細い管を挿入して、定期的に膀胱をからにする管理法)が必要となることがあります。